【イベント】maveセミナーvol.111「ワーキングマザーという選択」開催報告
ママが働いていることは、子どもの発達にとってマイナスなの!?
こんな心配にこたえるべく、2015年9月13日(日)伸芽’Sクラブ神楽坂校(現飯田橋校)で開催されたmaveセミナー。
2回目のご登場となるお茶の水女子大学基幹研究院教授の菅原ますみ先生より、ワーキングマザーの現状や子どもの発達についてお話をいただきました。日頃忙しいワーキングマザーにとって、知っておきたい研究結果とエピソードが満載でしたので、その一部をご紹介します。
プロフィール
菅原ますみ(お茶の水女子大学基幹研究院 教授)
国立精神・神経センター精神保健研究所地域・家庭研究室長を経て、2006年より現職。子ども期のパーソナリティの発達や精神疾患などの不適応行動の出現に影響する環境や、家庭や教育・保育施設・メディアや居住環境など広範囲な要因について研究する。
「個性はどう育つか」「保育の質と子どもの発達」「ママというオシゴト」「子ども期の養育環境とQOL」など著書多数。
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母親が働いていることは、子どもの発達にとってマイナス?
小さい子どもを持つ女性の就労率が2~3割の日本。海外に比べてまだまだ大変低いのが現実です。その理由のひとつが、いまだに根強い「3歳児神話~子どもが3歳になるまでは母親が子育てに専念すべきだという考え~」。しかし、海外の発達心理学研究では、 母親が働いているかどうかは、子どもの発達にネガティブな関連がないことがすでに明らかになっています。学術の世界では“3歳児神話”はもはや「風説」。「働いていること」は決してマイナスではないと結論付けられています。
一緒にいる時間の長さよりも、関わり方の質が問題。子どもとのよい関わり方とは?
母子関係に大切なのは、一緒にいる時間の長さよりも、関わり方の「質」。ここでは、成長段階に応じた関わり方のポイントをおさえましょう。
◆3歳まで
愛情を肌で確認する愛着形成期。子どものこころの”安全基地”として養育者との良好な関係を作ることが大切です。育休を取得することももちろんよいことですし、お仕事の関係で無理な場合は、子どもに愛情を注いでくれ良質な保育を提供してくれる預け先を見つけましょう。ゆったりとした環境の中で五感を活かした遊びに集中し、しっかり食べてぐっすり眠ることが大切です。保護者と保育者それぞれの心の安定と適切なケアにより良好な愛着関係を形成し、子どもを真ん中にしたよい信頼関係を築くことがポイント。子どもの前で保育園の先生の悪口を言うのはNGです。
出かける前は、子どもに分かることばで、きちんとコミュニケーションをとってあげましょう。毎朝「ママはお仕事に行ってくるね。夕方のお迎えは、ばあばが来てくれるからね。先生やお友だちと楽しく遊んでね。また夜に一緒にご本みようね。」と笑顔で言えるか、これはとても大事です。
◆幼児~小学校低学年
他者の気持ちが理解できるようになるなど「心」が発達する時期。ワーキングマザーの子どもは、小さい頃からたくさんの友だちや先生と一緒に過ごすことが多く、言葉や社会性の発達という点で強みがあります。親に対する思いやりや遠慮も出てくる一方で、「もっと早く帰ってきてほしい」「〇〇に行きたい」など自己中心的な主張も強くなってきます。子どもの声にきちんと耳を傾け、こちらの事情も説明しつつ、出来る範囲で叶えてあげるとよいでしょう。温かさと厳しさを持って子どもの行動を適切にコントロールできる「権威ある親」であってほしいと思います。学校行事などへの参加はできる限り大切にしつつ‘うちはうち’‘わが家はこうする!’というペースに親が自信を持つことも重要です。小学校に入るころには時間は短くとも一緒に宿題や翌日の準備をする時間を持ちましょう。
◆児童期後期・思春期
小学校高学年(児童期後半)になると、身体も心も大人に近づき、家庭や親の事情も理解できるようになってきます。母親の仕事にも評価や尊敬、感謝の気持ちが芽生えてきます。一方で、善悪の判断はまだ単純で未熟。一緒にいたい気持ちと葛藤することもあります。適切な距離感を心がけ、手がかからなくても目を配り、心を寄せることが大切な時期です。一緒にお料理したり映画をみたり、といった共同の活動も大切にしましょう。
◆中学生~高校生
この頃になると母親のこれまでのキャリアが生きてきます。働く人生の先輩として、進路決定や、就職活動の際は、会社の有能な部下の次世代育成をするようなつもりで子どもの相談にのってあげましょう。女優のように、ママとして先生として、アドバイザーとして、さまざまな役になりきりながら“コンシェルジュマインド”で子どもに接してあげてください!
予想以上に深刻なママの“子育てストレス”をどう解消する?
仕事と家事、育児の両立。現代のママは予想以上に深刻なストレスを抱えがち。異世代サポーター(祖父母、年配女性の子育て支援者)や専門サポーター(保健センター、児童館、保育園など)、ピアサポーター(同じ境遇にいるママ友)などを上手に利用して心の健康を保ちましょう!
今の状態をチェック!(〇が5個以上ついたらストレスが溜まっている状態です。少しでもリフレッシュする時間を心掛けましょう)
①ちょっとしたことでイライラする
②冗談をいうことが減った
③気分が沈みがちである
④最近睡眠不足である
⑤普段気にならないことが気になるようになる
⑥将来を考えるゆとりがない
⑦何事にも無関心になることが多い
⑧やる気が出ない
⑨すぐ疲れる
⑩リラックスできない
⑪肩こり、頭痛が続く
⑫便秘または下痢が続く
⑬食欲がない
⑭常にストレスを感じる
子どもが感じる家庭の居心地のよさ=パパとママが一緒にいて楽しそうかどうか?
先生の研究チームによる追跡調査から、子どもが0歳の時に父親が子育てにどう関わるかが、その後に大きく影響するとか。0歳の頃に育児に参加して子どもとかかわらないと、パパと子の愛着関係もうまく成立せず、ママの負担ばかりが増え、その結果、奥さんからパパへの愛情度も低下していくという負の連鎖が生まれてしまうというのです。子どもが感じる家庭の居心地のよさ(「のびのびできる」「あたたかい」「ほっとできる」など)は、「パパとママが一緒にいて楽しそうか」と影響していることも分かっています。
子育て期は夫婦の相互サポートが必要不可欠です。以下の3つのことを忘れずに!
1 お互いのプライベートな時間や活動を確保しよう
2 お互いに「ありがとう」「ごくろうさま」とねぎらい認めあえる関係を作ろう
3 外部サポートの有効活用も含めて、何をどんなふうに分担するかしっかりと決める
家事育児の夫婦分担はワーキングマザーにとって大きな、でもなかなか答えの見えない問題です。そして、そんなイライラは子どもにも大きく影響してしまうんですね。
さらに、「パパとママのどちらが保育園に迎えにいくか」など夫婦で重要な事項を決める際は、決して感情的にならずに、ビジネスライクに爽やかに決めていくのがポイントだそうです。
こんなときはどうすればいい?ワ―ママQ&A
最後に、ワ―ママならではのリアルなお悩みにアドバイスいただきました。
Q1:出産前と比べてどうしても仕事のクオリティが下がってしまう。どうモチベーションや時間を確保すべき?
A1:子どもが小さいうちは仕方ありません。この時期は割り切って、「細く長く、それでも続けていられることが重要」と考えましょう。全ての仕事に完璧な結果を求めずに「これだけは」と一点集中主義で。またネガティブになるのは疲れている証拠。考えすぎずに思いきって休むことも大事ですよ。
Q2:仕事柄、私の出張が多いのですが、そんなときママはどんなことを気をつけたらいい?
A2:出張が多い場合はスカイプなどを利用してママの気配をできるだけ感じさせて。寂しがるかもしれませんが、何日後に戻ってくるというパターンが分かれば子どもは慣れます。それと、お母さんが申し訳ないという気持ちをひきずらないこと。帰ってきたらしっかり愛してあげて。
Q3:兄弟二人をどうしても同じように関わってあげられず、最近下の子が甘えてこない気がします。大丈夫でしょうか?
A3:平等に接したいと思っても、忙しいママにとって難しいときもありますね。でも、下の子には最強の遊び相手、お兄ちゃんがいますから、お兄ちゃんと過ごす楽しさで満たされていることもあります。ただ、兄弟それぞれを主人公にしたママと二人きりの時間も作ってあげて!
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いかがでしたか? ママとして、働く女性として、妻として。女優のように役を演じ分けていくことが両立のカギという先生のお言葉が印象的でした。信頼できる保育のプロといい関係を築きながら、パパの自信も上手に育てつつ、ワーキングママはイキイキと子育てできたら理想的ですよね。